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夜になり。
哲司は仕事が終わり帰宅してきた。
今日は結花と一緒に早く帰って来た哲司。
食卓には夕飯が用意されていた。
今夜は煮魚と煮物とお漬物とお味噌汁が用意されていた。
「今夜は煮魚? 」
結花は一口食べてまずそうな顔をした。
「なにこの味付け」
リビングに優衣がやって来た。
「優衣さん、この煮魚は貴女が作ったの? 」
「はい、私が作りました」
「貴女、こんな味付けの濃い物よく作れるわね。私達を、早死にさせたいのかしら? 」
「ごめんなさい、そんなに濃かったですか? 」
結花は何も言わずにそのまま煮魚を、ごみ箱に捨てた。
「こんな夕飯食べれないわ。哲司さん、何か食べに行きましょう」
「ああ…」
結花は哲司の腕を引っ張り、そのまま一緒にリビングを出て行った。
優衣は何も言わずに、2人に用意した夕飯をかたずけ始めた。
リビングの外では、車いすに乗った孝治がそんな様子を見ていた。
「優衣さん…」
かたずけをしている優衣に、孝治が声をかけた。
「お父様、大丈夫ですか? お一人で来られたのですか? 」
「大丈夫だよ。住み慣れた家の中だから、このくらいは。それより、とても良い匂いがするな」
「匂いましたか? 今夜は、煮魚を作ったのですが」
「おお、それはいいな。私にも食べさせてくれないか? ちょっと、お腹が空いているんだ」
「分かりました。では、用意しますね」
全部捨てようとしていた優衣だが、孝治が食べてくれると言い出したため、残った煮魚を更に乗せて用意した。
「とても良い味付けだね。優衣さんは、料理が上手だね」
「いえ、これは母が教えてくれた味付けなのです。結婚が決まって日本人は和食が一番だからと言って一通り教えてもらっただけですよ」
孝治は思った。
こんなに暖かく美味しい料理を作れるのは、きっと、優衣が心の優しい子だからだと。
それなのにあの結花は…。
せっかく作ってくれたものを、ごみ箱に捨て外食とは。
それについてゆく哲司も…。
孝治ははらわたが煮えくり返る思いだった。
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