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(哲司さん。3年もの間、私はずっと孝治さんに頼まれて結花さんの調査をする為に貴方の妻としてこの家に居ました。結花さんは、私の祖父にも手を出して危うく財産を根こそぎ奪われるところでした。祖父の情報から、次に狙われるのは貴方の家だと情報が入り。そんな時にお見合いの話が来て、とても良いタイミングだと思い貴方とお見合いしました。スムーズに結婚でき、3年かけて予測どおり結花さんが孝治さんに近づいて来たので、ずっと証拠集めをしていました。…結花さんが逮捕された今、私の役目は終わりました。なので、貴方とお別れをしようと決めました。…3年もの間、私のような年上の女と夫婦でいてくれた事にとても感謝しております。…この手紙と一緒に、離婚届を同封しておりますのでサインをして提出して下さい。貴方の傍に居られて、私は幸せでした。…お父様の事を大切にされて下さい。どうか、お元気で…優衣)
手紙と一緒に入っている離婚届を見て、哲司はフッと笑った。
「…気づいた時は、もう手遅れなんだな…」
優衣が遠くに行ってしまう…
優衣がいなくなってしまう…
もうあの美味しい料理も食べれなくなるのか…。
遠ざかる優衣の姿を思いながら哲司は、何も考えられなくなった。
話を終え。
夏樹は家に戻って行った。
これからは、介護にも協力するからいつでも声を変えてほしいと言い残していた夏樹。
哲司は自分の部屋に戻り、暫く呆然としていた。
優衣が絶えていたのは目的があったからか…
ため息をついて、優衣と移した結婚式の写真を見ている哲司。
離婚用紙にサインしなくてはならないのは分かっているが、どうしても書くことが出来な方。
離婚されても仕方がないのは分かっている。
だが、優衣を失いたくない気持ちの方が強くて記入するペンを動かすことが出来なかった。
優衣に電話をかけてみようかと思ったが、電話をかけるのも怖いような気がして…。
暫く何もできないまま離婚用紙に記入できないままの日々を過ごしていた。
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