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21時を回る頃。
結花と哲司が外食から帰って来た。
「もうこんな時間ね。私、先にお風呂入るわね。明日は早出なの」
そう言って、結花はお風呂に行ってしまった。
哲司に先に入るように言う事もなく、いつも自分が一番にお風呂に入ってしまう結花。
結花のお風呂の時間は長く1時間は入っている。
優衣はいつも一番最後に入る為、深夜を回る頃にしかお風呂に入れない。
遅い時間にたし湯はしないでと、結花が言う為、殆ど湯船に浸かることが出来ない優衣はシャワー浴ばかりが多い。
この時間はいつも、優衣は食器の片づけや洗濯物の片付けなどで、バタバタしている。
哲司はそのまま自分の部屋に向かおうとした。
「哲司」
2階へあがろうとした哲司を、孝治が呼び止めた。
こんな時間に孝治が起きている事に驚いた哲司だが、今日は何となく顔色が良い孝治にまた驚いた。
「なに? なんか用? 」
冷たい眼差しを向ける哲司に、孝治は厳しい眼差しを向けていた。
「毎日、毎日外食ばかりでは、そのうち私の様になるぞ」
「大きなお世話。自分の体の事は、自分が良く知っている」
「それなら安心だ。だが、優衣さんがせっかく作ってくれた食事を食べずに外食とは。関心ならんな」
「しょうがないだろう? あいつの作る物は、まずくて食べられないから」
「そうか。優衣さんの作る食事が不味いと、お前は感じるのだな? 」
「ああ、今夜は味付けの濃すぎる煮魚で、とても食べれたものではなかったし」
孝治はフッと笑った。
「あの煮魚が、味付けが濃すぎると言うのか? それならお前、一度味覚検査を受けること進めるぞ」
ん?
目を座らせて孝治を見た哲司。
「外食ばかりで、舌の感覚がおかしくなったのではないか? 私も食べさせてもらったが、結花の作る食事よりずっと美味しかったぞ」
それだけ言うと、孝治はそのまま自分の部屋へ戻って行った。
フン! と鼻で笑って哲司は自分の部屋に向かった。
部屋に戻って来ると、哲司はドカッと椅子に座った。
「親父はあいつの肩をもって当たり前か、あいつに介護してもらってんだから」
そうは言うものの、哲司は正直言って外食にうんざりし始めていた。
外食になるといつも同じようなものばかり。
和食、洋食と変えてみてもやはり偏ってしまう。
しかし哲司は家庭の味と言うものは知らない。
母の重代は一切家事をやらず、食事は家政婦が作っていた。
たまに出来合いのものを重代が買ってきて食べた事はあったが、似たような味に感じて美味しいとは思ったことがなかった。
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