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敬礼に似たポーズを作り、シルバーグレーに染めた髪の上でビシリと止める!
いつも動画の冒頭挨拶で使っているポーズ。人気者たる俺の象徴である!
何かしらの反応が返ってきて然るべきなのだ。
だが、豹頭の男の返事は非情だった。
「知らん」
周りの野次馬たちまでが口々に無慈悲な答えを返してくる。
「知らんなぁ……」
「あたしゃ知らんね」
「知らねえなあ」
獣人の言葉は、絶望の闇へと誘う呪詛にも等しかった。
改めて思い知らされる。
ここは俺の世界と似て非なる異世界なのだ。
人気者だった俺を知るものはいない。
周囲から舌なめずりの音が聞こえる。
獣人の町において人間は餌なのだ。圧倒的弱者であり、捕食対象。
どこにも俺の逃げ場はない。
「詰んだ……」
両ひざが力を失い、歩道のタイルに崩れ落ちる。
「詰んだ~~~~っ!」
胸を染める絶望は、叫びとなって灰色の空を振るわせた。
「ダンくんお立ちになってください!」
俺様に叱咤を浴びせてきたのは、朝日色に波打つロングヘアの少女であった。
「インタビュー中に座ってはなりませんわ!」
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