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日曜の午後。時間通りに近場の公園で待ち合わせしていた。
広い芝生に喜ぶ愛犬。目の前には冷たさを感じる美人な彼女。そして。
「茶色。寂しがり屋の人間よ。よろしくね」
「予想外すぎて、帰りたい」
明るめの茶髪に大きな瞳をした、同じクラスの男子生徒だった。
気恥ずかしげに俯き、綾から距離を取っている。
騙されたと嘆くべきか怒るべきかと、頭を抱える。確かに犬とは言明していなかった。
「うそうそ。冗談よ。犬もいるわ」
逃げようと背を向けた綾に、待ったをかけた。
美也が言った通り、男子に意識を奪われていたが、彼の足元、隠れるように座る影。
小型犬のパピヨン。白黒の可愛い子は、やがて意を決したのか近づいてきた。
警戒するように観察し合い。犬特有の挨拶を交わした。
綾は固唾を呑んで見守る。
沈黙すること数十秒、恐れていた事態にはならず、勢いよく走り出した。
時折立ち止まり、寄り添ってじゃれ合う二匹はまるで旧友のような恋人のような空気である。
初めての犬同士の友達だ、綾は感極まって泣きそうになった。
犬が大好きな人間として、この光景は幸せに溢れていた。
「ほら、あんたも」
美也の苛立ちが混じった声に振り向けば、彼も感激に震えていた。
同類の気配を感じ取ったが、自分から近付く勇気はない。
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