犬の友達

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 恐らく飼い主であろう男は、目線を彷徨わせた。 「実は、朝に、よく散歩してる君を見かけて。……その、仲良くなりたくて」  急に話しかけるより、同姓を通じて頼めば良いと判断した結果らしい。美也も男子の名前を言うより、騙す一歩手前の誘い文句の方が呼び出しやすいと思ったそうだ。  確かに、突然男子の愛犬の話が出れば綾は拒絶しただろう。  そうしていたら、愛犬の喜ぶ姿は見られなかった。  初対面だと感じさせない恋人のような二匹。少々気になる部分もあるが、些細な問題。  来た甲斐があると納得すれば自然と頬が緩んだ。 「ありがとう、うちの子に会いたがってくれて。おかげで、あの子も楽しそう」  えっ。間抜けな返答が彼の口からこぼれた。暫しの沈黙の末、ぎこちなく笑顔を返す。 「二匹みたいに、すぐってのは無理そうね」  美也が、何故か呆れたような様子で呟いた。
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