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3.
ベッドの上の血溜まりに座りながら、俺は絶頂の時を迎えようとしてた。
新曲PV『恋の水蒸気爆発』の再生時間が、残り30秒を切った。この神聖なプロモージョンは、どんな最後を迎えるのだろう。
それまで背景だったCGの火山が、いきなり爆発した。水蒸気が作り出した霧のカーテンがセンターの3人を隠してしまう。
シルエットだけになった推したちの仕草を見て、俺は思いっきり鼻を押さえた(もう手遅れだが)。
ぬ、脱いでいる! どうみても衣装を脱いでいる! これはまずい! 聖なる尊さが妄想に侵食されていく。
そのままでも十分に刺激的な赤のジャケットが空を舞い、超ミニのスクール調スカートが地に落ちる。
霧の裏で何かが起きている……とんでもない事態が起こっている!
一度しか押せないと知りつつ『いいね』ボタンを連打する血だらけの指が止まらない。
残りはあと10秒。水蒸気はどんどん風に流されていく。3人の全てが白日の元にさらされる時がやって来る!!
もう追加のティッシュなどいらない。手で鼻を押さえなくても構わない。俺の視界は歓喜の涙と鼻血の赤に覆われた。
霧が完全に晴れた。
映し出されたのは、ライム・シリカ・シストの体を隠す巨大なパネルと、そこに書かれた手書きの文字だった。
『この続きは握手券付きのDVDでね(ハート)』
ショックのせいか、出血多量のせいか。
俺は池となった尊い血溜まりに、前のめりにぶっ倒れた。
(恋の水蒸気爆発 おわり)
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