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後日、前言通り皇帝に呼び出された俺は、そこで第四皇子の世話係を命じられた。
始めこそは絶対に断ってやると息巻いていたが、呼び出されるまでの数日で冷静に物事を考えられるようになった俺が行きついたのは、とにかく金がないという現実だ。
報酬が1000$ということを思い出し腹が立ったが、城へ怒鳴り込みに行ったところで金は手に入らない。
仕事を探してギルドにいけば、役立たずの元勇者と言われ追い出される始末。
路地裏で手配書を見つけた時は、さすがに言葉を失った。
結局俺ができることは、皇帝の命令に従うことだけだった。
「では第四皇子よ。あのものについていき、国の様子をしっかり見てくるのだ」
「はい、皇帝陛下の仰せの通りに」
俺の隣で同じように、膝をつき頭を下げるこの子供が第四皇子か。線が細く、ひ弱そうだな。
第一皇子は騎士団を率いる隊長だと聞いたが、この皇子は剣を握っている姿を想像することもできない。
皇子のことは追々聞くとして、今はもっと他に聞かなければならないことがある。そう、報酬の件だ。
「陛下、発言の許可をください」
「うむ、許可する」
「世話係とはいったい何をすればよいのでしょうか」
まずは仕事に対しての熱意を見せる。そうすることによって、信頼を獲得することができるからだ。
「皇子にこの国での市民の生活を教えてやってくれ」
「それなら俺でなくてもいいのでは?」
市民の生活を教えろだと?なぜそんな誰にでもできそうなことを、わざわざ俺に頼むんだ。
これは何か裏がありそうだな。
「魔物退治をしたりする際に、ただの市民では対処できんだろう」
「でしたら騎士などに任せるのがいいかと」
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