第6話

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「翔太、絶対にアイツに何もさせないから。過去の償いもさせてやるわ」 「僕のせいで……本当にごめんなさい」 「謝らないの。翔太は被害者なんだからね」 でも、僕も悪かった。 僕のことを好きになってくれた先生に父親を重ねて、心を許してしまった。 体も……。元はと言えば、僕のせいだ。 「先生があんな風になったのは、僕のせいかな……」 「馬鹿なことを言わないの。教え子に手を出したアイツが悪いに決まってる。何も知らなかった翔太に……」 「僕は、どうしてこう駄目なんだろう」 鈴木も、英介も、自分に関わらなければ、あんな極端な行動をしなかったのではないか。 このままでは、いつか康平のこともおかしくしてしまうかもしれない…。翔太はそう思うと怖かった。 「翔太は駄目じゃないわ。ただ…少し運が悪かっただけ」 「姉さん、色々ありがとう」 「アイツの件は何とかするから安心して。佐伯君が戻るまで居てあげるから」 涼子は電話で健士郎に、病院で何があったか手短に説明した。いつも冷静で淡々としている健士郎が、電話口で怒りを顕にするのを聞いて、義父も翔太のことを大切に思っているのだと分かる。 仕事はもういいから、今日は翔太に付き添ってやれという健士郎の言葉を受けて、涼子は康平が帰るまでマンションで待つことにした。
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