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最近、翔太はよく笑う。
笑うし拗ねるし泣くし…今まで感情を抑えていた反動だろうか、感情表現が豊かになり、毎日楽しそうにしていたのに…。
「あ…康平さん、帰ってたんですね」
「起こしたか?ただいま」
「大丈夫です。そろそろ起きなきゃと思ってました」
にこっと笑う翔太の笑顔は、どことなくぎこちない。それが堪らず、康平はベッドに腰掛けて、翔太の体をそっと抱き寄せた。
「……今日は、驚いたな」
「……怖かったです。先生が、笑ってるのが、余計に怖くて。今思えば、いつも怒っていた英介さんの方が、怖くなかった気がします…」
「どっちの男も忘れろ。もう会うことは無い男達だ」
はいと翔太は頷いて、康平の胸に顔を填めた。康平の温もりに包まれると、だんだん心が落ち着いていく。
「康平さんて、お日様で干したお布団みたいですね」
「ん?どういうことだ?」
「温かくて、いい匂いで、落ち着きます」
康平さんの言う通り、たまたま先生に会ってしまったけれど、もうあの病院に行かなければ会うことは無いだろう。先生はこの家だって知らないし、連絡先だって分からないんだ。きっともう、大丈夫…。
「あ、姉さんに康平さんとお付き合いしていることがバレました」
「ああ、そうみたいだな。今日は有耶無耶になったが、親父さんも交えてきちんと交際の許しを得ないとなぁ」
「僕の過去が過去だけに、姉さんは心配みたいでした」
涼子が手放しで祝福してくれるとは思っていなかったが、打ち明けた時はあまりいい顔をしていなかったなと翔太は思い出していた。
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