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「もし反対されても、僕は康平さんから離れたくないです」
「俺も翔太を手放す気はない。そこは二人で説得しような」
あれ……?
そういえば康平さんのご両親の話を聞いたことは無かったな。
「康平さんのご両親の方は大丈夫ですか?恋人が男では、抵抗があるのでは…」
「親には話してある。二人とも海外に居てな。比較的理解はある方なんだ」
男だからとか、女だからとか、性にはこだわりの無い両親に育てられたおかげで、康平も付き合うのは男であったり女であったりだった。恋人と長続きしない息子を、両親は案じていたが、本気になれる恋人が現れて安心してくれている。
翔太なら両親も気に入るだろうと、康平には自信があった。
「いつか、日本に帰ってきた時に紹介するからな」
「はい。お会いしてみたいです」
康平と話していると、鈴木のことは、頭の片隅に追いやられてしまっていた。
もう、終わったことだ。
妻が入院中で、鈴木も気が大きくなっていただけだろう。きっと妻が退院したら、かつての不倫相手なんかに構っていられなくなるはずだ。
あの激しい奥さんだもの。
今度浮気をしたら、先生だって殺されちゃうかもしれないし…。
「さ、夕飯の支度をするか。翔太は休んでろよ」
「起きます。一緒に料理しましょうよ」
翔太が康平を見上げて笑う。
先程のぎこちない笑顔とは違う、柔らかい笑みに、康平も自然と笑顔になる。
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