第1話

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第1話

僕は昔から要領が悪かった。 成績も運動も、人並み以下。 頑張っても頑張っても、結果には結び付かず、いつしか両親は僕に期待するのを諦めてしまった。 年の離れた姉の涼子は、いわゆる天才肌で、何をやらせても一流。スポーツでもいい結果を残し、大学は都内の有名大学を主席で卒業。今は大手の弁護士事務所でバリバリ働いている。 僕はと言えば…。 「で?録音はできたの?」 「あ、うん…。あの子達、僕が聞いてないことも沢山話してくれたから」 「そう。イジメの証拠が取れたらいいのよ。よくやったわ。これ、お礼ね」 すっと僕の目の前に封筒が差し出された。 僕は封筒を受け取ると、大切に自分の鞄に仕舞った。これで今月の家賃は支払えそうだ。 「翔太、あんたまだ意地張るつもり?いい加減、家に帰って来たら?」 「……帰っても、居場所がないもの」 「そんなことないわよ。義父さんだって、あんたのこと心配してるわよ」 僕は小さく首を振る。 義父が、出来の悪い自分を疎ましく思っていることは知っている。姉の涼子と違って、大学にも行かずにフリーターをしている僕を、恥ずかしいと思っていることも。まあ、僕のことが恥ずかしいのは、フリーターをしているせいだけでは無いんだろうけど。 「また、調査の仕事があれば回してくれる?制服は今度返せばいい?」 「翔太が持ってて。使うことがあるかもしれないし」 僕が頷くと、姉さんは立ち上がってさっさとカフェから出て行った。弁護士事務所でもエースとして期待されている姉さんは、いつも忙しそうだ。
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