規模のばらけた爆発

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規模のばらけた爆発

「ねえ、この頃、なんか徹底的にいろいろとタイミングがいいんだか悪いんだか……」 「いいんだよ」 「そうかなあ。悪運が強いって言えばそれまでだけど」 「いいの。だってなんだかんだいって毎回命拾いっていうか、痛い思いをしないですんでいるわけでしょうが。ここのところずっと」  ここ数か月、正確に言えば、理英の婚約が決まったその日からずっと。   彼女は「タイミング悪く」何かに巻き込まれ、「タイミングよく」大きな事故を免れる。そんなことが続いている。  大きいものだけでもピックアップしてみようか。  まずはその婚約が決まった日。  理英の使っていたスマートフォンが、各地で一斉に爆発事故を起こし始めた。慌てて機種変更に赴き、店を出たその直後、その店の中で小規模の爆発が起こり、数人のケガ人が出た。それが一件目の事故だった。  その一ヶ月後。  突然の爆発音とともに足場が崩れ、クレーン落下。最寄駅がズタボロになり、駅員さん3名が軽い怪我を負ったものの、彼女の乗った列車は発車した直後だったため無事。しかし駅の復旧までに時間がかかるため、毎日の通勤時間が倍増しストレスが増す。  その二週間後。  花火大会で爆発事故。観客と花火師数名が怪我をしたが奇跡的に軽傷だった。その花火大会に向かう最中だった彼女は、渋滞に巻き込まれて結局会場まで辿り着けず、結果無事だったが。しばらく花火の登場するドラマや映画が見られなくなるトラウマを負う。  その一週間後。  買い物に出かけたデパ地下に爆発物が仕掛けられたと警察が出動。爆発物処理班が見事な手腕でそれを取り去りことなきを得るが、彼女の目当てだった「その日限定の有名アニメとのコラボスイーツ店」が急遽終幕となり、独身最後のヲタ活に勤しむ彼女の心にダメージを与える。   その五日後。  婚約おめでとうたこ焼きパーティーを彼女の家ですることになり、それなら直火で焼けるカセットコンロタイプのたこ焼き器を買うか! とホームセンターへ向かったところ、カセットコンロ売り場で爆発。一気に火の手が上がるものの、流石の充実の防火設備が完璧に働き、売り場の一角が水と消火剤でぐっしょぐしょになるだけで死傷者ゼロ。しかしそのままタコパを決行するほどの厚顔さはなく、意気消沈してパーティーは延期。 ……規模感はバラバラながら、すべて「爆発」が関係している。
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