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不機嫌と怖がりのハーフ&ハーフ
「『リア充爆発しろ』って言われてるとか?」
「……ひさびさに聞いたわそのフレーズ。というかさすがにそれは不謹慎な気が」
「そのうちロケットでも爆発するんじゃないの」
「だからやめてよって。……なんかさあ、こういう『タイミングが悪い』ってさあ、よく言うじゃん運気がスムーズじゃないってこととか」
「運気って。スピリチュアル大好き女子ですか」
「大好き女子だよ、悪い?」
「悪くはない。かわいいと思います」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
それはともかくとして。と理英はため息をついて続ける。
「昔お母さんがよく言ってたんだけど。命根性が汚いって感じがする……」
「すごい言い回しだね」
「あの人も妙に事故現場とか居合わせるくせに、自分は絶対巻き込まれないタイプだったから。遺伝なのかしら、これって」
ああ、あのお母さんね、とわたしはちらりと頭の片隅に思い浮かべた。
隣にいる友人とよく似た顔をもっていたその女性は、たしかに数多起こる災難の脇を、見事な運転さばきですり抜けるようにして、たくましく人生を歩んでいたが、とうとう先日、娘の結婚が決まるのとほぼ時を同じくして、亡くなった。死因は事故でも事件でもなく、自宅の布団の中での心不全。ほぼ苦しむこともなく綺麗な死に顔を見せて逝った。理英はかなりご両親の歳が行ってからの子供だったので、享年は八十二歳。まあ、大往生だった。
「でもさあ、そのテイで行くと、この後、今日もわたしが近づいたり行ったりした場所のどこかで、何かしらまた爆発トラブルが起こるかもしれないってことでしょ? これを悪運ですませていいんだろうか……。かといって、家にずっと閉じこもっているわけにもいかないし……」
閉じこもってたら今度は理英ん家が爆発したりしてねー、と軽口を叩くと、半分ムッとし、半分は怯えた顔で、理英がこちらを振り返る。その絶妙なハーフ&ハーフの表情を見て、わたしは冗談だよ、と笑った。
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