黒猫

1/65
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ

黒猫

大雨が降る真夜中、黒い影が女の体を引きずり 山奥迄来ると、小さな懐中電灯を置きその影は スコップで土を掘っている。 ザクッ、ザクッ、深く掘るとその穴に女を掘り込む。 土をその穴に戻しスコップで地ならしする 落ちている枯れ木で隠す 周りを懐中電灯で誰もいない事を確認する。 「フッフッ!お前が悪いんだ!」 そう言い残しその男は雨の中へと消えた...... 大雨は容赦なく降り続く 赤い爪のその女の腕が、突然土の中からズンと 飛び出し雷鳴と共に、泥だらけのその腕を浮かび上がらせる 大雨が泥を流していく血が流れるかのように 泥が落ちていく 赤い爪をした女の手は、男を離さないかと するかの様に...... 真剣に見入っていた舞は、スマホの音に驚き 飛び上がる 「ひぃ!もう~恵美?もしもし」 「私〜今から行くけど何かいる物ある? 舞、どうせ晩ご飯の支度まだでしょ?」 「ええ!もうこんな時間! ホラー映画観てたから......じゃあ恵美、お願いしますぅ」 「OK!じやあ待っててねぇ、土曜日の夕方に ホラー映画とはねぇ独身女のする事か? 寂しすぎる~アハハ」 「恵美に言われたくないね!お互い様だよ アハハ」 芹沢 舞27歳独身。仕事は都内にある 大手広告会社の企画構成等をしている 恋愛もそこそこしたが 、結婚迄には至らない。 お金にルーズ、二股で裏切られた事もある 動物アレルギーで諦めた人も居た 結局、結婚より動物の方が大事なのだ 舞はこよなく愛する、動物が好きなのだ。 舞のマンションは動物が飼える 外観は古いが角部屋で内装、陽当たり風通し良く ロフト付き1LDK 思ったより広く家賃も格安なので気に入って7年になる ロフトは物置部屋として使っている 2ヶ月前迄は、殺処分になりかけた猫が居た 白と茶の虎柄の男の子、10歳位のその子とは6年間暮らした老猫だったがとても懐いてくれた 16歳のポコはガンになり 、病院で何とか 助けたかったが年齢的にも無理だった 部屋でポコを抱きしめ、苦しがり死を待つしかないのだ 「苦しいのなら、我慢しなくてもいいよ ゆっくりお休み ありがとう......ポコ」 撫でながら言うと頭を必死で上げようとするポコ最後に 、ニヤ~と小さく鳴き 舞の腕の中で眠るように逝ってしまった...... 箱にお気に入りの毛布を敷き花々に囲まれたポコお気に入りのおもちゃ、キヤットフード少し 小袋に入れ首輪を外してやる。 「自由に何処にでも行けるね、又逢おうね ポコ.....ありがとう.....さようなら」 舞の給料では、お墓迄立ててやれない 今迄に何十匹も 、そんな動物達を救って来た また、可哀想な動物達を救いたいのだ やむなく、みんな永代供養にしている 動物霊園に車で、ポコを連れて行く 恵美も来て、車の運転をしてくれた 涙が止めどなく溢れる、煙突の煙を見ながら 手を合わせ、さよなら、ありがとうと言う 何度も、こうして最期迄見送って来た 家に戻るとポコの写真の前に首輪をそっと置く 歴代の犬や猫達は皆、野良や殺処分になる様な 子ばかりである その子達の写真の前に首輪と花が供えてある ロウソクに火をつけ た 線香の煙が揺れる 手を合わせポコ達の冥福を、恵美と並んで祈る 二度ともう飼わないとその時は思う 泣き明かし、食事も食べられな位になるほど だった 子供の頃から何度もそんな体験をしているが 野良猫、野良犬達を見過ごせないのだ...... 電話をして来た親友は 木元恵美 仕事は大手アパレル会社の経理事務 舞と同郷で幼稚園から大学迄ずっと一緒だ 恵美と大学の入学時に2人で上京した 同じマンションを探したが、動物の飼える所は 少なく 、少し離れた場所にある 歩いて行ける範囲だ 間取りは、舞の部屋と良く似ている角部屋だ 家主が同じだからだろう 休みの時は、時々お互いの家でご飯を食べに 行き来している 恵美も動物好きで、今は殺処分なりかけだった 野良犬を飼っている 名前はピンキー マルチーズとプードルのミックス犬だ 色は淡いベージュ色小型犬で2歳位の女の子 舞にも懐いている。30センチ位の可愛い子だ 少しするとインターホンが鳴る 急いでドアを開ける 恵美は大きなエコバッグを持ち立っている 「来たよ~ピンキーの散歩の帰りなのハイ! 重〜い!」 舞は大きなエコバッグを受け取る 沢山のビールやワイン食べ物がドッサリ入っている 「恵美、どんだけ食べる気?重っ!」 エコバッグをテーブルにドスっと置く 「エヘッ、買いすぎちゃた!」 恵美の足元のピンキーがいる 「きゃあ〜ピンキー!いらっしゃい! う〜ん可愛いね!いい子、いい子」 ピンキーは舞の顔をぺろぺろ舐めながら 尻尾を、ちぎれんばかりに振って飛びついて来た 「ピンキー足拭かないと!コラ、じっとして!」 恵美も舞もしつけには 、厳しいのだ 「恵美さあ上がって、何から食べる?」 低いテーブルに食べ物を並べながら聞く 恵美はポコ達の写真に線香を立て手を合わせる 「舞、ポコちゃんもう2ヶ月になるんだね 少しは元気になったから、安心したよ」 「恵美ありがとう 、もう大丈夫!」 2人掛けのソファーに恵美は腰掛けながら 「とりあえず、ビールだねぇ」 「うふっ恵美ったらハイハイ」 「先ずは、カンパ〜イ」 独身の二人は、たわいない話しで、盛り上がる ピンキーはお気に入りのドックフードで満足し ボールで遊んでいる 「ふう~食べたね!呑み過ぎたかな?」 「舞は強いねぇ、うわばみ〜アハハ」 「恵美だって、私以上呑んでるよ!アハハ」 同じ位呑んでいるのだが...... ピンキーは 、はしゃいでいたがいつの間にか 恵美の膝で寝てしまった。 「今度、中学校の同窓会どうする?」 恵美はピンキーを撫でながら聞いてきた 「そうだね、お盆休みだっけ? きっと、結婚してる子も居るよね?」 「もうすぐ30歳だよ!ヤバくない?舞〜」 「そうだね、ヤバいよね! 恵美じゃあ、行く? 実家にも長い事 帰ってないし」 「行くっきゃないっしょ?男子の中にいい人 いるかもよ、うふっ」 同窓生の話しで、盛り上がり夜は更けて行った
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!