黒猫

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翌日、雨の降る気配はなくガッカリした 仕事を終え、5時過ぎになっていた 恵美の月命日だ、いつもの様に恵美の墓参りに行く 途中で花を買い恵美の墓に着くと、花が沢山手向けられていた 幸恵や両親と徳永の花であろう 舞は花を添え、線香を立て手を合わせた 「恵美、ピンキー来たよ、みんなも来たんだね 施設の子達は、みんないい子ばかりだよ 恵美、生きてて欲しかった、寂しいよ.....」 その時、冷たい物が首筋に当たった 「雨!」 ポツリポツリと雨が降り出した 段々と強くなりザアーと降り出し、バリバリと 雷が鳴る 「きゃ~、あの時と同じだ!」 舞は辺りを見渡す 「クロいるの?クロ~」 「ミイ~ミイ~」 「クロ!何処?舞よクロ、クロ~出てきてクロ~」 舞は、墓の隅々を探した 「ミイ~ミイ~」 声を頼りに、必死で探す 日も落ち、真っ暗だ スマホの明かりで、クロを探す 声が近くなってきた 「ミイ~ミイ~」 「あ!クロ~」 舞はビショ濡れになりながら、クロを抱き上げた 前のクロより、かなり小さい子猫だ 1ヶ月前後のようだ だが、舞には分かったのだ 「クロ、クロなのね! 会いたかったよ!帰って来てくれたんだね」 子猫の目は、宝石の様な青い目だ 「間違いない!小さいけどクロの感触だわ やっと会えたクロ、もう何処にも行かないで」 舞はクロを上着で雨を避けてやり、抱き締め泣いた 雨は容赦無く、舞を叩き付ける そんな事は気にもならなかった 「恵美、ピンキー、クロが帰って来てくれたよ いつまでも見守っていてね、じゃあ、又来るね」 舞は恵美の墓に手を合わせ、急いで車に乗り タオルでクロを拭いてやり もう1枚のタオルを出した 「寒くない?タオルをかけてあげるね」 「ミイ~ミイ~」 季節は秋風が吹く時期に、変わっていた 突然、頭の中で声がした、あの、モヤモヤだ 「何の用が有るのよ、クロは帰って来てくれたわ!まだ、人間が信じられないの? クロと私は、絆で結ばれて居るって 分かったでしょ?」 「ふっ、その様だな」 「そのモヤモヤ達を、解放してあげて! きっと、生まれ変わりたいと思ってるわ 怨むと言う事は、愛して欲しいと思ってるのよ 苦しく辛い事は、痛い程分かる でも、いい人間も沢山居るわ 生まれ変わりたい筈よ、私を信じて! 行くべき異世界に帰って、生まれ変わって 帰って来てよ そして優しい家族と暮らすのよ どれだけの子達が、そこでうごめいているか 私には分からないけど、幸せになって欲しいの さあ、恐れずにお行きなさい」 すると少しづつ光の玉が、モヤモヤから飛び出し 始めた 段々と数が増え、天を目指し異世界に飛んで行く 「お前達は騙されているんだ!行くな!」 「止めても無駄よ!みんな幸せになりたいのよ それが分からないの?」 光の玉は大雨の中、一斉に飛んんで行く 残ったのは、光の玉一つとなった 「あなたも、帰りなさいよ」 「信じるものか! 私は目の前で家族を、生きたまま火炙りされた そしてこの私も、その中に放り込まれたんだぞ! 人間共は笑っていた、許せると思うのか!」
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