終章

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 それ以来ハンスは、抗魔法実験体という言葉を、極力忘れるようにと心がけてきた。それだけではない。魔法無力化の能力についても、使用することを意図的に避けてきた。それがハンスのためだというなら、反論する余地はない。  ただ――。  そうしていられる時間は、刻一刻と終わりを迎えようとしているのだろう。  開戦のときは近づいていた。  ゼノビア軍との死力を尽くした戦争が始まれば、この能力についても、行使する日が必ずやってくるだろう。元々、彼らは魔法を使うことはないが、しかしマナを使用ことはある。魔法無力化は、マナを分解し発散させる能力なのだ。魔法無力化の使いどきは、必ずやってくる。  それがもし、大切な誰かを守るためであれば、間違いなく躊躇なく、魔法無力化を使うだろう。  それはそれでいい――。  それで自分自身が納得できるなら、それが正解の選択なのだ。  さあ、ときは満ちた。  戦争のときは、もうすぐそこまで、近づいている――。
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