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そういう高貴な枠組みに、生まれながらにして嵌め込まれている以上、その外側と同じ空気を無条件に吸えるとは、ソフィ自身も思っていなかった。
身分が違っていれば、そこに日常的な差異が生まれてしまうのは、致し方のないことなのである。
貴族は特別な存在――。
地位と名誉と財産を欲しいままにする、ごく少数の選ばれし存在。
そういう特殊な空気というのは、幼いながらでも、たとえ無邪気な子どもであっても、知らないうちに感じてしまうものらしい。
だから、魔法を学ぶためにアカデミーへ入学したときにも、ソフィは何をするでもなく、いつの間にか一目置かれる存在になってしまっていた。
しかも、そういう異質な視線というのを、ソフィは人一倍、強く認識してしまう性質を持っていた。周囲からの特異な視線を敏感に察知してしまうのだ。
だから余計に、同世代の中流や下流のアカデミー生たちと、うまく打ち解けることができなかった。
それがたとえば、同じ貴族の子息令嬢どうしであれば、もっと友好的にもなれた。
貴族の主催するパーティーに、ソフィは両親に連れられて、幼少の頃からたびたび参加をしていた。そこにやってくる同世代の子息令嬢とは、お互いに対等に会話を交わせていたものだ。
ただそれは――とても表面的なものでしかなかった。
貴族というのは、命よりも何よりも、自分自身と一族の誇りのほうを大事にする、という考え方の人間が多いらしい。
だから、表面的には良い関係を築けていても、なんというべきか、もっと深い部分では、心の奥底では、けっして強くつながってなどいないのだ。
なぜだか、わかってしまうのだ。そういうことを、ソフィは人一倍、感じてしまうのだった。
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