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あ、やっぱり?
ふてくされたように窓の外をみていたこのみちゃんが、お店の扉を開けた。
「ここで言い合ってても埒があかないんで、公平に判断してくれる人呼んどきました」
このみちゃんが開けたドアの外には、制服の警察官が立っていた。
「は? 警察!?」
驚いて固まる私と白鳥様をよそに、このみちゃんは警察官の二人をお母様のもとへと案内する。
「どう思います? これってカバっすよね?」
「うーん、そうだな、カバだな」
年配の警部が唸ると、若い警官がソファーに近づいてあちこち調べながら言った。
「コビトカバですね。前足の間に水掻きがあります。コビトカバは絶滅危惧種で個人の飼育は認められていません」
それを聞いた年配の警部はギロリとこちらをみると、
「密輸入の恐れもあるということだな。よし、詳しい話は署で聞かせてもらおう」
と言って、白鳥様とお母様を連れていってしまった。
「おかしいわねぇ。お母様ったらどこで入れ変わっちゃったのかしら?」
そう言って首をかしげながらパトカーに乗り込む白鳥様を見送りながら、このみちゃんが言った。
「やっぱりカバだったっすね!」
「…………そうね。カバだったわね」
私は『接客マニュアル文香バイブル』をそっとゴミ箱に捨てた。
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