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お母様!?
白鳥様が重たそうに抱えていてのは、カバンではなくカバ……どう見てもカバだった。
ようやく気づいたかとでも言うように、このみちゃんが、キラキラした視線をこちらに向ける。
私はハッと気を取り直した。
『いついかなるときでも、お客様を褒めて差し上げることを怠っては行けません』
そうでした、文香バイブル!!
私は遠退きかけた意識を引き戻し、微笑みを顔面に張り付けた。
「かっ、かわいらしい……カバちゃんですこと!あ、そうでした、本日は母娘プランのご予約でしたが、お母様はどちらに?」
それを聞いた白鳥様は露骨にその細い眉をしかめた。
「母に向かってカバですって!?失礼しちゃうわ!」
「へっ!?」
母? 今、母と言ったのか!? カバではなく母?
私は混乱する頭をフル稼働させた。
こんなときに使える文香バイブルのお言葉は……
『お客様の仰るどんな言葉でも受け止めなさい。正しいのは常にお客様なのですから』
私は白鳥様のお言葉を全面的に受け入れた。
「大変失礼致しました。それではまずカウンセリングを行いますので、お母様もどうぞソファーにお座りになってくださいな」
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