お客様の言葉、それは真実!

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お客様の言葉、それは真実!

「店長! これこれ。間違いないっすよ、あのお客さん、カバですって!」  このみちゃんが携帯の画面をグイグイと押しつけてくる。 「なによこれ、コビトカバ!?」 「間違いないっすよ」 「でも白鳥様はお母様だって……」 「店長、あの現物を目にして、何を信じたんっすか!?」  私はコビトカバの画像を閉じた。 「文香バイブルには『いついかなるときでも、お客様の仰ることは真実』って書いてあるわ!」 「いや店長、落ち着いて?」  このみちゃんの言葉を手で制して、私は店長として毅然とした態度で言った。 「ネイルオプション、追加でオーダーが入ったから。お母様に春らしいネイルをお願いできる?」 「ええっ!? うち、カバのひづめにネイルしたことないっす」 「そうでしょうねぇ。でもあれはカバではないわ。白鳥様のお母様よ!分かる?」 「分かんないっす。うちにはカバにしか見えないっす」  このみちゃんのまっすぐな気質が裏目に出た。 「カバにしか見えない? でもねこのみちゃん。文香バイブルは言ってるわ。『お客様のニーズに応えてこそプロ』ってね! あれはカバではないわ。なのよ!」  私の迫力にこのみちゃんの目が大きく見開かれている。 「エステは白鳥さまをこのみちゃんが担当して。私がお母様の施術をするわ」  私はそう指示を出すとフィッティングルームに戻り、お二人をエステルームへとご案内した。
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