◇ヴァンパイアハンターとヴァンパイア

2/10
前へ
/179ページ
次へ
 ビストロ・ノクターンまではゆっくり歩いても30分程度で辿り着く。急ぎ足ならもう少し早く帰る事が可能なはずだ。  僕達は出来るだけ吹きさらしにならないように、建物の壁を風よけにして急いで歩いている。 「はあ、はあ……」  荷物を持ちながらだから、早歩きとはいえそれなりに息もあがる。 「きょっぴー、荷物持とうか?」  歩き続けることに耐えきれずに立ち止まってしまった僕の所に、ヴィクターが走り寄る。  ヴィクターは人造人間。弱点はいくつかあれど、力やタフさは僕より基本的にずっと上だ。僕の分の荷物を持つのもそう難しくはないのかもしれない。 「有難うございます、でも……」  両手が塞がってしまったら危ない、そう言おうとした瞬間に僕は言葉を止めた。 「きょっぴー? ……っ!!」  最初は怪訝な顔をしていたヴィクターだったけれど、すぐにその気配に気づき身構える。 「おい、この前はお前よくもやってくれたな」  なんてタイミングが悪いんだろう。 「僵尸……!」  そう、中華街でトラブルになった、僵尸の一味であるサングラスの男だ。なんでか分からないけれど、僕の事を気に入らず因縁をつけてくる。 「えっ、あれが……!? ボク、初めて会ったかも」  ヴィクターはどうやら初対面らしい。 「す、すみません。僕達台風が来るから急いでるんです。申し訳ないのですがまた今度にして貰えないでしょうか……」  こんなところで無駄な時間を食う訳にはいかない。  僕は頭を下げて丁寧に僵尸の一味の男に頼んでみた。 「あぁ? そんな話誰が聞くか!」  ……駄目だった。  この男は台風なんかどうでもいいらしい。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

329人が本棚に入れています
本棚に追加