◆第四.五話:悪夢

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  ◇  ◇  ◇  ◇  シャワーを浴びて、ようやくざわつく気持ちは落ち着いた。  とにかく汗で服はびっしょり濡れていたし、夢見も酷く悪かったのですっきりしたかったのだ。 「ふう……」  それでも拭いきれない不安を吐き出すように、僕は大きく息を吐く。  さっき思い切り叫んだから、喉が少し痛む。水でも一口飲もうかと思って、僕は流しへと向かった。 (大丈夫、ただの夢だ。それ以上何かあるわけなんかない)  自分に言い聞かせるように心の中で呟く。  まだ早朝には遠い時間だ。コップ一杯の水を飲みほした後で通りがかりに厨房を覗くと、真っ暗で静かなものだった。  こんな不安な顔を誰かに見られたくはない。ある意味、誰も起きていないことに、僕は少し安心した。 「きょっぴー……?」 「ひっ……!」  安心した瞬間に背後から声がしたので、僕は声にならないような悲鳴をあげて振り返る。 「あ、アインさん……」  そこに居たのはアインさんだった。明かりも持たずにこの暗がりを歩いているのは流石ヴァンパイアと言うべきか。 「こんな時間に明かりもつけないで……一体どうしたんだい?」 「その、少し喉が渇いて起きてしまったんです。それで」  夢の事は伏せて、僕は取り繕いながらアインさんに話した。  だって、アインさんの首を絞める夢を見たなんて、とても言える訳がない。 「そうかい? それなら良いんだけど……いや、ちょっと待って」  少し納得いかない顔をしながら僕の顔を見ていたアインさんは、僕の手を引いて厨房の横の休憩室に入ると、部屋の明かりをつけた。
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