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「あの……?」
アインさんは僕の顔をまじまじと見た後でひどく驚いた顔をする。
「どうしたんだい、酷く顔色が悪いじゃないか。……何か不安な事でもあったのかい?」
暗がりだからばれないだろうと思っていた。
どうやらアインさんにはしっかりと見抜かれてしまったようだ。
「ええとその……」
何と言おうか悩む。
「その、凄く嫌な夢を見てしまったんです。それで凄く怖くなって……でも、もう大丈夫です」
躊躇いがちに、俯きながら僕は答える。目を見たら嘘だとばれてしまいそうで怖かった。
勿論、夢の内容については触れない。
「そうか……本当に大丈夫なのかい?」
アインさんは心配そうに僕の顔を覗き込む。
「はい、大丈夫です。ただの夢ですから」
そう、ただの夢なのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
アインさんはまだ心配そうな顔で僕の事を見ていたけれど、暫く後で大きく溜息をついた。
「――もしも困ったことがあったら迷わず私に相談して欲しい。どんな事でも必ず君の助けになるから。……いいね?」
夢についてそれ以上の事は聞かれなかった。でも僕に言ってくれたその言葉は、本当は全部分かっているのではないかなんて思えてしまう。
夢の内容があれではなかったのなら、今すぐにでも僕はアインさんに相談していただろう、そう思う。
「はい、有難うございます」
僕が頷いて、アインさんはようやく少し安堵した顔をした。
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