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◇台風がやってくる
起きたらなんと、昼だった。
「嘘おおおお!?」
いつも必ず目覚ましが鳴る筈だ。毎日鳴るようにセットしてあるから、今日だけ鳴らないなんてそんなことは……。
「嘘……」
時計を手に取った僕は言葉を失った。
何故か目覚ましがオフになっている。
慌てて僕は服を着替えると、厨房の方へと走って行った。
「すみませんっ! 寝坊してしまって……」
地面に頭が着くかと思う程体を折り曲げて僕は謝罪する。
「おはようきょっぴー。体は大丈夫?」
「店長からきょっぴーの体調が悪いって聞いて、今日は休んでもらおうと思ったんですよ」
休憩室からヴィクターとジェドさんの声がして、僕は慌てて振り返った。
丁度ランチタイムが終わって、二人は一息ついていたところだったらしい。
「じゃあ、目覚ましが鳴らなかったのは……?」
「ああ、余が消しておきましたよ」
なるほど、オフにした記憶が無いと思っていたら。
消した人が居たから鳴らなかったのか。
本当に心臓が泊まるほど驚いた。僕はへなへなと地面にへたりこんでしまった。
「ちょっと、きょっぴー!? まだ体調が悪いんじゃない!?」
慌ててヴィクターが僕を助け起こしてくれた。
「いや、そういうわけじゃ……」
そう言いかけたところに
「よぉ、きょっぴー! 具合大丈夫か?」
「エミリオさん!」
なんと、ビストロ・ノクターンの制服姿のエミリオさんが立っていた。
「その恰好は!?」
何が何だか分からずに、制服を指差して目を白黒させる僕。
エミリオさんはよくぞ聞いてくれたとばかりにドヤ顔で胸を張る。どうやら制服を見せびらかしたいらしい。
「どや! 似合うやろ! きょっぴーが具合悪い聞いたからな。今日は臨時の従業員や!」
「えええ……いや、エミリオさんパン屋さんの店長さんでしょ、大丈夫なんですか……」
「今日は臨時休業にしたんでな、気にせんといてや!」
驚きで声が出ない。そんなのありなの。
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