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◇ヴァンパイアハンターとヴァンパイア
僕たちはそれから、ホームセンターなどを梯子してアインさんに頼まれた物を買いそろえていった。けれど、そこからが本当に大変だった。
既にホームセンターには僕達と同様に台風に備えるためのあれこれを買いそろえようとする人で溢れていたのだ。
お店の大きさや僕たちの部屋の窓への対策なんかも考えると結構分量が必要で売り切れ続出。結局僕たちは数か所のお店を回りながら少しずつ、買いそろえていかなければならなかった。
こんなことならゆっくり寄り道なんかしている場合じゃなかったかも……なんていう後悔も少し過る。
なんとか無事に全部の買い物を終えたのは、もう一時間ほどしたら日も落ちるだろうという頃だった。
建物の外に出ると、昼間よりもずっと強い風が絶えず吹き続けている。
「ぎりぎり間に合いましたね」
台風が本格的に上陸する前にお店に戻るには、十分すぎるほどの時間が残されている筈だ。
アインさんに心配をかけてはいけない。間に合って良かったと、僕は安堵した。
「そうだね。これなら十分時間があるはずだ。急いで帰ろうか」
風に煽られて乱れる髪も気にせずに、ヴィクターも荷物を手に提げて頷いた。
空を見上げると、時間の割には薄暗い。
着実に台風が近づいているのを感じる。
「こんなに強い風になるなんて……」
昼間の様子だと、上陸はもっと遅い時間だった筈だし、ここまで強力な台風でもなかった気がする。
「いつの間にかコースが変わってたみたいだ。モロに直撃するかもしれないね」
スマホに映る台風情報を見ながらヴィクターが言った。
道理で皆が必死で台風対策のグッズを買い漁りに来たわけだ。
僕達はなるべく歩きやすそうな安全な場所を選びながら、ビストロ・ノクターンに戻ることにした。
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