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「ど、どうしましょう……」
僕は困り果ててヴィクターの傍に寄って小声で相談する。
「まかせて」
思いのほか、ヴィクターがきっぱりと言い切ったので僕は驚いた。
ヴィクターは実は凄く腕に自信があるのだろうか、それとも秘策か何かを持っているのか……。
ヴィクターはポケットに手を入れるとにやりと笑う。
「ヴィクター……?」
「たすけをよぶ」
僕の頭が真っ白になって、次に何を言うべきか暫くの間考え込んでしまった。
「……えーと……?」
「僕達だけでどうにかできる訳ないよ。ここは助けを呼ぼう」
大変現実的な答えだと思う。確かにアインさんかエミリオさんならきっと余裕でこの男の事を退けてくれるだろう。
「あ、もしもし、店長? えっとですね、実は今僵尸一味の一人に因縁をつけられてしまって……」
一瞬呆気に取られて茫然とそれを見ていた僕は、スマホで会話するヴィクターの事を狙って、男が掴みかかろうとしている事に気づく。
「ヴィクター! 危ない!」
咄嗟に僕は叫ぶけれど、男は動きを止める気配はない。
間に入ろうとするものの、全然間に合う気がしなくて僕は焦る。
――駄目だ!
とにかく誰でもいい、ヴィクターを助けて欲しい。
自分ではどうにもできなくて思わず僕は目を瞑ってしまう。
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