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「ふん、お前になど、こいつの事など何一つ分かるものか」
「……いいえ、分かりますとも」
祖父の言葉にきっぱりと、アインさんは言い切った。
その後で少し目を閉じ、そしてもう一度見る。
「あなたの息子さんと私の妹が海に沈んだ、あの事故の時以来ですね。……お久しぶりです、神宮寺・アルベルト・理仁さん」
「えっ……!?」
「嘘!?」
僕も、ヴィクターも驚いて思わず声を出してしまった。
だって、まさか二人が知り合いだなんて……。
それに、アインさんの妹さんが亡くなった原因ってもしかして。
「ふん……」
祖父は何も答えない。
「お爺様! どういう事なんですか! アインさんの妹さんが無くなる原因を作ったのは……」
「黙れ、聖弘!」
言いかけた僕の言葉を打ち消すように、祖父は怒鳴る。
そのあまりの剣幕に、僕は堪らず身を竦めた。
「神宮寺さん……」
悲痛な顔でアインさんは祖父を見つめている。その先に見える感情は何なのだろう。
妹さんが亡くなったショックでお店も開けられなかったアインさんの事を思うと、僕は胸が締め付けられるような思いだった。
「戯言はそこまでだ。聖弘、やれ」
祖父の指が僕に向く。
「え……?」
一瞬何が何だか分からずに祖父の顔を見た瞬間、再び僕の意識は暗闇の中に落ちた。
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