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陰湿
「ちょっと!?」
油断していた私も私だけど、お弁当を取り上げる取り巻きも取り巻きだ。
「桜子様、庶民の味をお持ちしましたわ」
「有難う。頂くわ。貴女達もおかず割けて差し上げてよ」
何が割けて差し上げてよ、よ!
「そのお弁当、私のなんだけど?!」
とうとう私はキレた。
「お黙り!」
桜子さんが逆ギレする。
おまけに取り巻き達が桜子さんの席を取り囲んで近寄れない。
男子達もニヤニヤ笑いながらお昼ごはんを食べている。
「神宮寺を敵に回すなんて、千夜の奴も何が有ったか知らねーがバカだよなあ!」
「面しれーから、俺らも加わるか?!」
そう言って笑い出す男子達。
桜子さんはお弁当箱を開けると、取り巻きの何人かに本当におかずをあげる。
「有難う御座います、桜子様」
礼を言う取り巻き達。
とうとう桜子さんは、残ったおかずの卵焼きを食べる。
「これが庶民の味ですのね!」
桜子さんは驚いた様にそう言うと、残りのお弁当を熱心に食べ始めた。
お父さんが作ってくれたお弁当…。
私は見てるのが辛くなり、だったら学食へ行こうと教室を出ようとする。
と、取り巻きの何人かとニヤけた男子2人が前と後ろ、両方のドアで通せんぼしてきた。
「あら、勝手にどちらへ行くつもり?」
「そんなのいちいち貴方達に言わないといけないの?!」
私は桜子さんの席を振り返って言う。
「当たり前でしょう。貴女は私の奴隷なんだから」
「えっ!」
驚く私をジロッと一瞥して、桜子さんは全部お弁当を食べてしまった。
「不味くはなくってよ。箱要らないからお返しするわ」
桜子さんはそう言うとお弁当箱をゴミ箱の方へ放り投げる。
「止めてよ!」
私の叫びも虚しく、お弁当箱はゴミ箱に当たって床に落ちた。
私は落ちたお弁当箱を拾おうと駆け寄る。
幸い箱にヒビとかは、はいってなさそう。
「明日も宜しく」
明日もって…これから毎日、お昼ごはん抜き?!
そんなの冗談じゃない。
かと言ってお昼休み何処にも行かせてもらえないなら、どうすれば良いのか…。
私はグウグウ鳴るお腹に、恥ずかしい思いをしながら空のお弁当箱をカバンに仕舞った。
幸い午後の授業は音楽だった。
皆で合唱してる間もお腹は鳴るし、空腹感は段々と酷くなっていくけど、テスト中と違って、皆の歌声でお腹の音が聞こえないのが唯一の救いだった。
しかし、お腹に力が入らなくて私自身はいつもの半分も声が出なかったけど…。
転機は帰りのHRの時に担任の先生から聞かされた。
「明日の午後の特別授業は…」
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