高級車

1/1
前へ
/21ページ
次へ

高級車

男子や取り巻き達に、校門前に停まっていた桜子さんの車に強引に乗せられる。 急いで降りようとしたら、桜子さんが私の目の前に立ち塞がる様に後から車に乗り込んできた。 「お願いだから、降ろして!」 私は桜子さんに懇願するけど、桜子さんは後部座席の手前に座って退いてくれない。 なら、奥のドアを開けようとするけど、そっちは全然開かない。 そうこうしてる間にシートベルトを締めながら桜子さんが言った。 「私の豪邸まで高級車での旅を堪能出来るんですのよ。それなのにお礼の1つも言えないんですの?」 お礼なんて…無理矢理乗せたクセに…。 車の外には取り巻き達と男子達が笑いながら私を見ている。 仮に今、降りても無事で済みそうになかった。 「何をしてるんですの!?早くシートベルトをお締めなさい!」 桜子さんの怒声に私は渋々シートベルトを締める。 桜子さんの豪邸が何処にあるのか解らないけど、いざという時は携帯のナビに頼るしかない。 「岡村。出発して良くてよ」 「かしこまりました、お嬢様」 満足そうに座席にふんぞり返る桜子さんの声に、運転席の岡村さんも本当に車を発進させてしまった。 走る車中にて。 桜子さんが、お腹が空いている上に不安な心境の私に声を掛けてくる。 「千夜雅。貴女、5月の時の中間テスト、カンニングしまして?」 何故、突然そんな事を言うのか訳が解らない。 だけど、1学期の中間テストの順位は確か私が1位で桜子さんが2位だった筈。 私の方が成績が良かったのに対して桜子さんは負け惜しみでも言ったのかな。 「カンニングなんてする訳ないじゃない!」 私が釈明すると、てっきり喰いついてくるかと思った桜子さんは、静かに目を閉じて座席に身を委ねた。 「そう…。このまま乗っていって良くてよ」 強引に乗せといて、よく言うわ。 只、桜子さんの声に、学園での張りが無いのが拍子抜けだった。 桜子さんの事だから、豪邸に帰った後も家庭教師でも付けて勉強してそう。 そう言う私も勉強は毎日していた。 これからは、それに洗濯と掃除が加わる。 只、今日は降ろされる場所にもよるけど、出来るか解らない。 それにお腹が空いて、先に夕ご飯を食べてからじゃないと、何も手につきそうになかった。 やがて、車は大きな門構えの在る前で止まった。 「お嬢様、着きました」 岡村さんがそう言って車から降りて、桜子さん側の後部座席のドアを開ける。 しかし、桜子さんは眠ってしまった様で目を開けない。 疲れているのかな。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加