カミングアウト

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カミングアウト

「雅、今日何か有ったか?」 「ううん、何も無いよ。それより今、勉強中だから」 「今日は勉強してねーで、ベッドに横になってろ。梅ゼリー作ってきたからよ」 「有難う、お父さん。でも、この課題だけはやらせて。明日学園に鈴木研究員がスピーチに来るんだけど、その時に聞いてみたい事を書きなさいって内容なの」 「鈴木が?雅の高校に来るのか?…アイツ、そんな事、一言も言ってなかったぞ」 「多分、私が清良学園に通っている事、鈴木研究員は知らないんじゃない?」 私が最もなことを言うと、お父さんは納得した様子でローテーブルに梅ゼリーを置いてくれた。 「…雅。俺はそんなに頼りない親父か?」 「…」 その時、廊下の方からお母さんの声が聞こえる。 「貴方ー!お風呂、入っちゃってー!」 「少し待ってろ!…何か有ったんだな?」 「…うん」 私は今日有った事をお父さんに話した。 「俺に任せろ」 お父さんが部屋を出ていった。 私は課題を一旦、中断して座椅子に座ると、お父さんが作ってくれた梅ゼリーを食べる。 「美味しい…」 ひんやりとさっぱりしてて、口の中で溶けてしまいそう。 そう明日は鈴木研究員が来る。 明日は何も無いと良いな。 翌日。 お父さんのお陰か、昨日の事が嘘の様に何事も起きずに午前中が過ぎた。 だけど…。 お昼休み。 早弁したから、今日はお弁当を食べられる心配も無い。 でも、桜子さん達は朝から面白くなかったみたい。 先生がトイレに行った僅かな時間のことだった。 私は不意に後ろから誰かに羽交い締めされる。 「ちょっと?!今度は何?!」 私は椅子に座らされたまま、身動きが取れなくなった。 「大人しくしてろ」 直ぐ傍で男子の声がする。 と、桜子さんが優雅に、しかし解せないと言いたそうに私の席へやって来た。 「千夜雅。貴女の親は何者なの?」 「な、何者って…パティシエと学校の先生だけど…」 「嘘、仰い!只のパティシエと先生が教師に圧力をかけられる訳無いでしょう!」 そう言いながら桜子さんは、私の目の前で、私のカバンを開ける。 「止めて!離して!」 嫌な予感がした私は思わず叫んだ。 しかし、運悪く、先生は教室内に帰ってこない。 廊下から誰かに目撃されない様にか、取り巻き達がグルリと私の席を取り囲む。 そんな中、桜子さんは、昨日出た課題の紙を取り出した。 「貴女が鈴木研究員の話を聞くなんて、100億年経っても早すぎることでしてよ」 そう言うと桜子さんは私が昨夜やった課題の紙を思い切りビリビリに破く。
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