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デート
何かお父さんには聞きたくないって思った私は、独断で白いワンピースを着て行く事にした。
翌日。
少し早めに、携帯のナビで山村亭にたどり着いた私は、その規模の大きさに唖然とした。
高級料亭と言っていい位の佇まいだわ。
ワンピースじゃなくて、着物の方が良かったかな。
でも、私も…そして多分、お父さんとお母さんも着付けられないと思う。
視線を料亭の入り口に向けると…。
居た!
私の目はスーツ姿のメガネさんに釘付けになる。
きっと目もハート形になっているだろう。
鈴木研究員…テレビで見る以上に格好良いなぁ。
そう思いながら、おずおずと鈴木研究員に近づいていくと、彼と目が合った。
キャー!
まさかいきなり声に出す訳にはいかず、私は心の中だけで、歓喜の悲鳴をあげる。
と、鈴木研究員が私に声を掛けてきた。
「もしかして、千夜くんの娘さん…雅さんですか?」
ああ…鈴木研究員が私の名前を口にしてる…。
私は精一杯、平静を装って応える。
「は、はい。ほ、本日はお忙しい中、こうして来てくれてありがとうございます」
「いえ、構いませんよ。貴女のお父様には僕も色々助けてもらってますから。最近は直接会えてませんが、昨日の電話の声を聞く限り元気そうですね」
「あ、はい。…あの、来るの早いですね」
私は待たせちゃ申し訳ないと思い、少し早めに来たんだけど、それ以上に鈴木研究員の方が来るのが早かった。
「僕は昔から5分前行動を心掛けていますから。そう言う雅さんも来るの早かったですね。お父様とは大違いです」
お父さん…お母さんも言っていたけど、昔は相当なワルだったらしい。
対して鈴木研究員は優等生だったんだろうなぁとは、私だけのイメージじゃない筈よ。
ワルと優等生…一見、正反対に思える2人だけど、だからこそ磁石みたいに相性が良いのかな。
「失礼しました。お世話になっておきながらお父様に対して失礼な事を言ってしまいましたね」
私の沈黙を誤解して鈴木研究員が謝る。
私は慌てて両腕を前に伸ばして、首と一緒に振った。
「い、いえ!お父さんが高3の頃ワルだったのは、お母さんからも聞いてますから!」
「ワルでもワルになりきれないワルですけどね」
「えっ?」
ワルになりきれないって、どういう意味かしら?
私は思わず振ってた首を傾げ、両腕を下ろす。
鈴木研究員は私の反応に苦笑した。
「まあ、立ち話も何ですから、そろそろ中に入りませんか?」
鈴木研究員は私を促す。
「はい、でもめっちゃ高そうな料亭ですね…」
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