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「ちなみに、結婚とかは……?」
え、何でそんなことお前らに言わなきゃいけないの、ねぇ。閉じ込めたんだよ、お前らを。
「いやそれは一旦どうでもいいから」
「奥さんいらっしゃるのかだけ……」
……いないけど。
「あ……」
「独身……なんですね」
え、何で聞いたの、ねぇ。こんな感じになるのに何で聞いたの。
「独身、って10回言ってもらっていいですか」
はぁ? いやもう意味わかんないし。
「いや10回クイズ出せってお前が言うから出してんだよこっちは。はよ」
……独身独身独身独身独身独身独身独身独身独身。
「結婚できるといいですね」
おめ舐めてんな、おい。もうあっきらかに舐めてんな。
「大体、なぜこんなことをするんです。我々高校生を連れてきて、10回クイズ出せなんて」
……実は私は……10回クイズが……大好きで……。
「まんまじゃねーか」
「溜めて言うことでは無かったですねぇ、今のは」
「もういいから早くここから出せよ、恥ずかしいぞ未成年相手に」
ぅうるせぇわ! いいから10回クイズ出せや! 飢えて死にたいのか! 言う通りにしろお前らは!
《リュウくーん、ラーメンできたわよー》
あ。
「え?」
「誰の声です?」
い、いや、いや何でもない。てか、え、いや、別に今、え、何? なんか聞こえた?
「凄いあたふたしてるのが声だけでも分かるのですが」
《リュウくーん、お母さん先食べるよー》
「お母さん? え、お母さん?」
いやいや何でもない、本当。
「え、実家暮らしなんすか。32歳で」
……ん、ま、まぁ。
「え、実家から俺たちに向かってずっと喋ってたんすか」
そ、そうね、うん。
「……えぇぇぇぇ!」
「これは面白いですねぇぇ!」
いや黙れ! まじで黙れお前ら!
《リュウくーん、早くー》
お、お、お母さん! ちょ、ちょっと待ってて!
「てかお前本名でやってたのかよ。冒頭に、闇の民リュウだ、とか言ってたけど」
「珍しいですねぇこういうのを実名でやるの」
うるせぇわ! もうお前らずっとそこから出んな! 10回クイズ出されても答えてやんねーわ!
《リュウくん、もう先食べますよー》
ちょ待って待って!
「うわ、何か凄いドタドタ言ってる」
もう行くから! 待ってお母さん!
「あ、では貴方、待って、と10回言ってください」
「畝麩、もう聞いてねぇよこいつ」
「大丈夫です、耳を澄ませてください」
ちょ待って待って、待って待って待って待って! ねぇ待って待って待って! ねぇ待って、
「パパを別の言い方すると?」
お母さぁーーーーーん!
「あ、扉空いた」
〈完〉
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