クリームソーダの頃

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 出番まであと少し。俺たちの最後のライブを見に、クラスメイトをはじめ、続々と観客がやってきた。と言っても、ここに来る女のほとんどは孝輔が目当てなわけだが。孝輔は某アイドルグループ系の甘い顔立ちに甘い歌声……このバンドの人気が保たれているのは、コイツのおかげと言っても過言ではない。  そして、その中に……。 (有坂(ありさか)……)  有坂(ありさか)美月(みづき)――俺が一年の時から気になっている女で、一年の時だけクラスが一緒だった。それに対して、孝輔は有坂と三年間同じクラス。おかげで、毎年聞きに来てくれるのは嬉しいが、その度に俺はどういうわけか孝輔にからかわれている。それは、今回も例外なく……。 「冬ちゃん、あがらないようにね」  孝輔に耳打ちされ、俺は思わずムキになった。 「うるせーな!」 「ほら、スマイルスマイル。冬ちゃん、黙ってたらそこそこイケメンなのにもったいない。そんな怖い顔してたら、女の子逃げちゃうよ」 「どうでもいいだろう、そんなこと……」 「そんなこと言っていいの? 彼女、こっち見てるよ」  その言葉で、俺は思わず有坂の方に振り向いた。目が合うと、有坂は孝輔と俺に向かって手を振ってくる。 (やめろ……余計緊張するだろ!)  心の中でツッコミを入れるが、当の孝輔はそんなことお構いなし。  この日のラスト、俺たちは出番を迎えた。孝輔のMC――これが始まれば、考えることはただ一つ……この日のために練習してきた曲をミスなく弾き切ることだけ。緊張など、一気に吹っ飛んだ。
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