16人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「君たちはこのカーネーションを使って母親を見つけなさい」
自分たちに渡されたのは真紅のカーネーションだった。
ここは天国。
前の人生を終え、次の人生を送るために最初に訪れる転生機関である。
自分は第八億八千期の転生者で、お世話になった天国とも今月の第二日曜日でさよならだ。
「いいか。五月の第二日曜日……母の日までにカーネーションを受け取ってもらうんだぞ」
カーネーションを渡した神が言う。
「このカーネーションは特別なアイテムじゃ。これを一番最初に掴んだ者が渡した者の母親になる魔法がかけられてある」
自分は控えめに挙手をする。
「はい、神様」
「なんぞ?」
「そういう大事なことは神様に決めてほしいです」
「うーむ……」神は白く立派な髭を撫でながら困ったような表情を浮かべる。
「そういうわけにもいかんのじゃ。これを見ぃ」
神は何処から出したのか大きなホワイトボードを見せつけてきた。そこには円グラフが記されている。
「『前世の母に満足したか』という項目で転生する者たちにアンケートをした」
神は一番多い部分を指で差す。
そこの部分は『いいえ』だった。
「このように、一番多いのが満足していない。二番目がどちらともいえない。残りの極僅かが満足しているだった。無回答は除くが」
「ああ……」
「クレームがいっぱいついた。ということで、母親は自らが己で選ぶべしという方針になったのじゃ」
それを聞いて自分は頷かざるを得なかった。
最初のコメントを投稿しよう!