昔々の刀のお話

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もうちょっと語ります。 凄く細かいところを見ていくんですが、日本刀って何度も折り返して叩いて作られますよね? 大体十数回折り畳み叩くという物も有るそうです。(伝聞ですが) 2の10~15乗くらいだと仮定すると、折り返した層が1,024~32,768くらいあるんですよ。 当然、その分細かい年輪のような模様がうっすら本体の表面に見えるのです。 木目のようだったり、波打っていたり、人の指紋のように見えたり……。 本当に光の角度を変えて、よーく見たら見えるのですが、刀派によっても一つ一つ違うのです。 主な原因は、各々の時代や鍛刀の手順によっても変わるからと聞きました。 基本はたたら製法で作った玉鋼を重ねて熱して、一つに纏める事から始めるけど、重ね方のコツも流派によって多少違うらしいのです。 その後の折り曲げ方等々、ちょっとずつ違った手法が僅かな模様の違いを生み出すそうです。 この刀が年輪のような模様だけど、隣のはざらっとした砂地のようだとか。 大きく別けて日本刀には五ヶ伝という所謂大手と小反りという中小零細が有ります。 別に大手が素晴らしいとか、零細には名刀が無いとか言うのでは無いです。 規模が大きかったとか政府のお抱えが多かっただけです。 小反り達は、個人事業とかフリーランスのようなものと思えば。 古くから有るのは、備前伝、相模伝、大和伝、美濃伝、山城伝の五つです。 各々の発祥した地域の名前が付いてます。 大体はこの五つの流派の流れを汲んだり、影響されていると考えて良いと思います。 一番多く重要文化財とかで登録されているのは、備前伝です。 一応の理由が見た目の華やかさで、実戦で使い潰さずお洒落として持ってる物や奉納品が多かったのではというのと、そもそもがしなやかで折れにくい、そして生産数が一番多かったと言う点だと思います。 例えば、同じ五ヶ伝の相模伝と比べると、相模伝は鋭く切れ味最高でしたが、鋭さを追及したために比較的柔軟性が少なくて折れやすかったそうです。 人で言ったら真面目で不器用で仕事は黙々とこなすけど、本当はナイーブな性格。 備前伝は、バランスが良く、切れ味はよく切れてある程度しなやかで折れにくい。 ある程度衝撃を逃がせるくらいにしなやかゆえに丈夫で長持ちしたと思われます。 人で言ったら真面目だが臨機応変能力が高くて、芯はちょっとやそっとで折れない強さがある人。 戦場では武骨にゴリゴリ使える方が良いから、斬りまくり相模伝は折れたりで無傷な物は少なくなり、備前伝は切れ味良くて実戦でも活躍してても、華やかで折れにくい故に無傷で残ってる。 ……………って、博物館のおじさんが言ってました(笑) 成る程、説明の例えが判りやすい(笑) あ、国宝の三日月宗近も五ヶ伝の内の一つに入ってます。(前に上げた二つではないですよ。) 後鳥羽上皇時代に有った、当番制の月代わり刀鍛冶が私の持つ資料に載ってましたが備前伝が十人、山城伝が二人。 当然、その分作成する本数からして違ったんですよね。
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