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ぼけっと人混みを眺めていると、ホームの真ん中あたりから、大きな声が聞こえてくる。
「やめなさいよ!離れて!」
「うわっ。ちょっと…何すんだよ。」
「汚い手で触らないでと言ってるの!」
朝から、痴漢か何かか?と好奇心が勝って少しだけそっちの方に近く。
他の人たちも、朝の憂鬱な時間に見世物に出くわしたかのように、シャッターチャンスを待ちスマホを片手にじっとその人だかりを見つめている。
あーそっか、こういうのを撮ってアップロードすると人気が出るのか。
最近、個人のアカウントを作成したが、全くフォローもいいねもされないことに悩んでいた。
いやーでもさすがにな…。
そんなことを思っていると、その甲高い声がもう一度聞こえてきた。
「あなたたちも、なんなんですか?みんなで黙ってこちらを囲んで見ていて。ゾンビか何か?気持ち悪いんですけど。やめてくれます?」
ゾンビという非現実的な例えに、思わず、クスりと笑ってしまう。
「ちょっと、あなた今笑いました?」
突然、その女性に指をさされ、ビクッとする。
サーっと血の気が引いて、冷や汗が出る。
やばい、今、俺は注目を浴びている。
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