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始まりの合図
上条と別れて、自分の部署へと向かう。
デスクに座り、さて今日の作業は、とパソコンを開きかけると、上司から声をかけられる。
「高瀬くん、おはよう。ちょっといいかな。」
「あ、おはようございます!はい!」
慌ててパソコンを閉じて、上司の後に続く。
どこへ行くのかと思えば、そのままエレベーターに乗り、どんどん上階へと連れられて行く。
(こんな上の階に来たこと一回もないんだけど…。俺何かやらかしたか?!)
手に汗を握り、緊張で足が震える。
上司はと言うと、どこか不安げな様子だ。
それがさらに、俺まで不安にさせる。
目があうと弱々しく笑うだけで何も詳しくは説明してくれない。
「あのー…。一体どこへ。」
「着けばわかるからね。はは。」
上司はハンカチで汗をぬぐいながら、最上階でエレベーターを降りた。
(最上階…ってことは…?!)
ドキドキと心臓の音がうるさい。
静かな廊下に、俺と上司の二人の足音だけがコツコツと響く。
目の前に厳かなドアが見える。
上司がドアをノックし、挨拶をした。
「社長、高瀬をお連れしました。」
(しゃ、社長?!)
やはりとは思っていたが、最上階といえば、社長の部屋がある階だった。
ドアを開けたのは、綺麗な秘書の人で、その先にはさらに廊下が続いていた。
ガラス張りの廊下から、街を見下ろす景色にクラクラする。
綺麗な秘書の後に続き、上司と僕はまるで操り人形のように、行進していた。
綺麗な声で、社長に呼びかけ、さらに大きなドアを開ける。
その先には、また豪華な家具や装飾品が所狭しと並べられていた。
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