第1話 屈辱の初陣

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ところが事件発生の5日後…… 早朝、池袋のコインパーキングでランニング中の老人が皮膚のない男性死体を発見。 再び事件が起きてしまった。 今回も頭部を除く、身体の皮膚が綺麗に剥ぎ取られており、被害者の顔は穏やかな顔をしていた。 麻酔で眠ったまま息を引き取ったのだと検視官はそう述べた。 そのお陰という訳でもないが、身元はすぐに判明できた。 被害者は河辺庸太(かわべようた)さん。 50歳の中年男性であり、彼もまた池袋公園に屯していた浮浪者だった。 彼の為人、事件前の経緯についてはこれから聞き込み調査に入るが私は内心、焦っていた。 警戒を強化したにも関わらず事件が起きてしまった。 これは棚瀬に命じた私の落ち度だ。 しかしそれでも事件は起きた。 一途の不安は疑惑へと変わる。 棚瀬は私の命に従ったのだろうか……… 命令を無視して、1人で勝手に捜査の指揮をしたのではないのか。 あの男が私を見下しているのは知っている。 私に手柄を渡したくはないのも知っている。 そしてそれが上層部の本心である事もだ。
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