第1話 屈辱の初陣

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上層部の中には私の捜査一課長就任に快く思っていない人物が少なからずいる。 理由は単純明快。 私が女性だからだ。 古いと思われがちだが、まだまだ警察は男社会の縦社会。 その体質から簡単に脱却できないし、そこから女性が這い上がろうとするのは今だに難しい。 キャリア組で期待のある棚瀬に陣頭指揮を執らせたのが良い例だ。 女性初の捜査一課長に手柄をあげるよりも未来ある若手キャリアの管理官に手柄をあげた方がまだマシというもの。 元々、“女性初の捜査一課長”というのは世間の注目を浴びせるためのいわば広告塔であり、お飾りに過ぎない。 お飾りは大人しく座っていろ。 それが上層部の本心なのだ。 勿論、全員がそういう本心を持ってはいる訳では無い。 中には私の実力を知ってるし、期待してくれてきる人だっている。 後任を任せてくれた池元警視正や、私を応援してくれる本多さん。 それに以前、私の過去を聞きに来ていた人事部の柳瀬課長だってそうだ。 彼も私の話を聞いて、実力を知ったからこそ、公平に捜査一課長就任を後押ししてくれたに違いない。 彼らの期待に応えるためにもこの事件を解決しなくてはならない。 そんな中、ふとあの男の影が脳裏に蘇った。 池元警視正の前にこの椅子に座っていた男。 彼ならなんて言うのだろうか……… かつての相棒………影原警視正なら…………
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