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「『梟首の男』ですか。影原さんもお読みになるので?」
大鹿検事は文庫本を影原警視正に渡した。
「ええ。ストーリーが面白いので何度も読み返しております」
「確かに、この本は面白い。ストーリーも展開も登場人物の設定も中々だ」
大鹿検事は『梟首の男』を褒めたが「ただ……」と付け加えた。
「面白いのはこの本だけですよね。その後の高千穂真美代の作品は非常に面白くない」
褒めたと思いきや今度は高千穂さんの作品を酷評し始めた。
「いや、全くです」
私物を全てしまい終えた影原警視正が頷いた。
「勢いがまるで違う。『梟首の男』はその後の展開が分からないのに、その後の彼女の作品は手に取る様に分かってしまう。登場人物にも色気がまるでない。酷いものですよ」
「色気?」
「まぁ、個性ですね。高校時代、私も推理小説を書いたのですが、読んでくれた教師に「色気がない」と言われましてね。だから個性を知るにはまずはその職業を直に体験してみようと思い立ち、探偵クラブを作りました。そして推理というものに興味を持って警察官を志しました」
「なるほど。良いと思いますよ」
大鹿検事は終始、穏やかな表情を浮かべていた。
影原警視正は話を戻そうと、被害者達の写真を見せた。
だが答えは「会ったことありません」と首を横に振った。
「そうですか。では最後に一つ。剣道はしてましたか?」
「いいえ。子供の頃から空手一筋です」
「そうですか。ありがとうございました」
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