プロローグ

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「すみません。くどいようですが、本っ当にココナッツチョコないんですか?」 「誠に申し訳ございません。売り切れです」 何度も同じ質問を繰り返す警視正に、ドーナツ屋さんの店員さんは呆れつつも、頭を下げ続けた。 「仕方ないですって。そういう事もありますよ」 私は何とかして影原警視正を宥めようとした。 それでもは諦めるという事を知らなかった。 「作るまで待つっていうのは……」 「警視正」 相変わらず甘い物をこよなく愛する相棒。 久しぶりに駄々をこねる姿に笑いを堪えつつ、呆れた口調で警視正を呼んだ。 「誠に申し訳ございません。原料のココナッツがもう品切れとなってしまいました。作るのは明日になります」 「警視正。諦めましょう。ほら、ショコラフレンチならまだありますから」 私は店員さんに頭を下げながら、警視正を慰めた。 結局、警視正はへの字口になりつつもショコラフレンチとゴールデンチョコとエンゼルフレンチとポン・デ・リングのみに留めた。
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