66人が本棚に入れています
本棚に追加
――...
―コンコン...
『...はい、』
自室から出るに出れないでいると、小さくノックされる。
気に入らないことがあったからって、部屋に閉じこもるとか...こんなとこが子どもなんだ。
冷静さを取り戻し、クリアになりつつある頭で思う。
蒼「...朱生、入っていい?」
『...うん』
【ケンカしてもいい
その代わり必ずその日のうちに仲直りする】
母さんがよく言ってる石川家ルールの一つ。
蒼「...ありがとう、入れてくれて」
『...ん』
俺が扉を開けると、兄ちゃんは笑顔でそう言った。
『...、』
蒼「朱生、ごめんな」
『...!』
その言葉に弾かれたように、兄ちゃんを見る。
昔から、ケンカをして先に謝るのは決まって兄ちゃんだった。
ケンカして、仲直りしたいのに...謝りたいのに...って悩んでるくらいなら、その無駄な時間を朱生と何か楽しいことをするために使いたい。
不安とか、後悔とかに時間を費やしたくない。
兄ちゃんは、いつもそう言ってた。
蒼「言い訳っぽくなるかもしれないけど、
朱生のこと子どもだなんて思ってないよ」
『...っ』
蒼「自分の考えをきちんと言葉に出来る
努力を怠らないし、自分以外の人に対していつも真摯に向き合える
...すごいなって思ってる」
兄ちゃんから発せられる言葉は、
いつも思いやりに満ちてる。
今日はケンカじゃない。
俺が一方的に苛立ちをぶつけただけだ。
それさえも、受け止めてくれる。
『...兄ちゃんは、なんも悪くない
だから、謝んないで
ごめんなさい、意地張ってムキになった』
真っ直ぐ兄ちゃんを見ると、優しく笑ってた。
敵わない。
もっと、成長しないとだめだ。
『...紫乃は?』
蒼「んー...今日は帰るってさっき帰ったよ」
『そっか...』
姉ちゃんって呼ばないのは、変えない。
だけど傷つけたことは謝らないと。
蒼「だーいじょうぶ!」
少し乱暴に頭を撫でられた。
『...ちゃんと、紫乃にもごめんって言うから』
蒼「...うん」
頭を撫でられて、
兄ちゃんの笑った顔に安心する。
子ども扱いすんなって言ったのは自分なのに、
こんな時は【石川 蒼太】の弟でよかったって思うんだ。
最初のコメントを投稿しよう!