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―六年前・春―
*side紫乃*
蒼「ただいまー!」
『お邪魔します!
今日、おばさんいるの?』
蒼太の家は、母子家庭でおばさんは看護師。
なので、小さい頃からよく二人は留守番してた。
蒼「夜勤だって言ってたから、もう出てるかも」
久しぶりにおばさんにも会いたかったなぁ。
?「...おかえり」
そんなことを考えてると、目の前に現れたのはどことなく不機嫌そうな男の子。
蒼「朱生!ただいまー!
もう飯食べた?」
朱「まだ
兄ちゃん帰って来てから、って思って」
待って、この大男が朱生?
久しぶりっては言ったけど、たった数ヶ月会ってなかっただけなのに!
怖い!男の子の成長期怖い!
蒼「紫乃もご飯食べて行けば?」
『え、いや...でも』
なんか、あんまり私歓迎...されてなくない?
朱「なに、柄にもなく遠慮してんの?紫乃」
不機嫌そうだった朱生が、今度は生意気そうに笑う。
『...久しぶりに会ったのに、なんだその言い方ー!
そして、呼び捨てすんなって何回言ったら分かるのよ!』
朱「腹減ったー早く食べよ」
べーっと舌を出しながら、リビングに戻って行く朱生。
――...
蒼「...昔は姉ちゃんって付けてたのにね」
『もう!ほんとだよ!
いつの間にか育って、生意気になってさぁ...
昔は可愛かったのになぁ...』
洗面所で手を洗い、蒼太とリビングに向かう。
カレーのいい香りがした。
蒼「朱生、準備してくれたんだ!ありがと!」
テーブルには、三人分用意されていた。
『...ご馳走になります
あ、朱生!高校入学だね、おめでとう!』
まず一番に伝えようって思っていたのに、
さっきの衝撃で忘れていた。
『代表挨拶するんでしょ?
すごいじゃん!頑張ってたもんね!』
朱「...ありがと。」
それだけ返す朱生からは、昔と変わらない照れ屋な一面が感じられて少し安心した。
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