二匹の兎

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旦那の陰茎が私のヒダに吸い寄せられる。存在を示すかのように一度ぱちん、私の恥部をその肉の塊で叩いた。陰核に少しの刺激を感じ、身を捩れば、旦那は喜んだ。ぬちゃり、焦らすように陰茎を擦りつける。 「沢山溢れてくる。夕霧のぼぼは、新造のように若々しい。……ほら、ひくついておる」 「……主様、あまりいじめなさんな。わっちゃぁ、もう、たまりんせん。堪忍しておくれなんし」 座敷では目も合わさぬ傲慢さで、手の届かぬおなごが自らの床、自らの力で、乱れるのが旦那たちは嬉しいのだろう。蛙のように股を広げ、花の蜜のように男を誘う。獣のように差し引きされるまら。この行為はただの支配的な構図に過ぎない。女郎が情夫(いろ)に入れ込むことだって、その支配される構図に何ら変わりはない。愛や恋とはなんと卑しいか。子を孕むために、ただ仏が付け加えたものじゃねえか。 「言ってごらん。強請っておくれ」 なんとまあ、下品なお顔だこと。 親父様のまらを差し込まれるより屈辱的なことは、もうこの廓にはない。私は背中を逸らせ、旦那を舐めるように見つめる。私は己の中心に手を伸ばす。ぬるり、そこを触り、指先に蜜を乗せる。触った時に身体を跳ねさせるのは忘れない。 「……分かるかい? もう主様が欲しくて堪らないんだ。挿れておくれよぉ……」 月明かりに指先を照らし、てらてらとひかるそれを見せつける。旦那の喉仏が上下した。 恥じらいを見せながらも、欲望に負け恥じらいを捨てる、その同居する姿を、私は姐さんから教えてもらった。私を花魁に躾けた天下一品の姐女郎に。 「ああ、夕霧!」 「っん!あぁ……主様……っ、」 私のぼぼに差し込まれた旦那のまら。熱く固い陰茎は私の中を懸命に這いながら、最奥を目指す。圧迫感を覚えながらも、慣れた快感に意識は飛ばない。私のヒダが旦那の陰茎を包み込む。 「夕霧!! ……ゆう、ぎり、!」 ゆさり、上下に動き出した旦那。廓でおなごを買えるほどの裕福さを持つとそれなりに肥えた身体をした旦那が多い。はだけた着物から出た肉付きの良い背中に爪を立てる。 「ああ……なんと柔らかく、あたたかい」 「さいざんすか? 主様のは長く、わっちの中にある臓を潰しちまいそうだ」  ふふ、と旦那に向けて微笑めば、より一層まらが膨れる。質量の増えたそこに、また私のヒダが吸い付いていく。 不寝番(ねずばん)(※1)がそろりと障子を開けた。空気のように存在を消した男衆は行燈(あんどん)に油を注ぐ。 旦那の腹と似たような太った月が、まぐわう前に交わした盃の中に浮いていた。 ※1 寝ずに見世の中を回る男衆。今回のように行燈、昔の照明器具などの火を見て回ったりする
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