二匹の兎

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私の日課だった太陽が今や、花扇の背中に姿を見せている。私が格子窓を見ているのに気付いたのか花扇は──御天道様に見られるのが好きか?と喉を鳴らしながら、私の唇に吸い付いた。 ふかふかの布団の上で、手を握り締められ、花扇の口付けに応じてしまう。唾液がゆっくりと送り込まれ、そして歯列を這う舌。抜き差しを繰り返され、上顎を集中的に狙う小さな可愛らしい花扇の舌は私を極上の気分にさせる。 今まで、廓で生きてきたことを笑ってしまうほどに私はこの行為に酔ってしまっていた。 「気持ちよいか? 夕霧」 「ふン…ぁ……」 「答えることも出来ぬとは……」 垂れる蜜が布団に染み込んでいくようだ。私は花扇の帯に指をかけていた。それに気付く目の前の整った顔は嬉しそうに緩む。 「強請るのが上手いではないか。誰に教えてもらったんだ?」 まるで客のような言葉をかけてくる。それでも欲の方が勝ってしまうほどに私は花扇に翻弄されていた。 浴衣を脱いだ花扇は私の肌に、肌を重ねる。餅のように柔らかく、雪のように白い肌。花弁のように柔らかな色の乳頭。同じ場所にあるものを重ねてくる花扇。──ンっ、と微かに漏れた吐息に嬉しくなり、私は更に肌を近付けた。 「……はな、おうぎ」 「なんだい? 夕霧花魁」 「こんなにも、安らぎを感じるものだと思わなかったよ……この行為が。花魁失格かねぇ?」 少し整った息で想いを口にしてみる。あぁ……そうだ。ここはまことの心が伝わらねぇ場所だ。花扇は私の手管だと思ったのかもしれねぇ。見開かれた花扇の瞳に虚無を感じていたその瞬間だ。花扇は私の腰に手を差し込み、砕けた身体を抱き起こす。そして私の背中に布団を重ねた。 「痛みはないか?」 「……心の臓が痛いさ。おまえさんの最初の言葉が莫迦にここに突き刺さる」 背後に重ねられた布団に身体を預け、身体の真ん中に手を置く。“私のおかげだと思ったなら身を捧げろ”いつもなら袖にしてしまうような旦那の乱暴な言葉に似ておる。 「すまなかった。すまない……」 そう花扇は悲しげな表情を浮かべ、私の膝裏に手を差し込む。ぐっ、と開かれた足に戸惑う時間は与えられず、花扇の足が絡まる。そして私のぼぼに花扇のぼぼが当てられた。 びり、と背中を伝う感覚。陰核と乳頭、そして仕事道具として扱ってきた恥部が擦り合わせられる。 「はじめてかい……?」 「! ぁ、当たり前、っあろう……ンぁ」 「そうか。おまえさんのはじめてが貰えるとは、あの力も役に立ったというわけか」 この為に花扇は私の背後に布団を重ねたのか。頭の片隅、ほんの片隅でそんなことを思いながらも、花扇が小刻みに動いたおかげでそれも消え失せる。固いものは固いものを刺激し、柔らかいものは音を立てながら優しく撫でられていく。そして深い口付けも落とされる。 「おまえさんも動いておくんなんし。男と違って種は出ない。ただ、おまえさんを気持ちよくしたいだけだ。それには夕霧、おまえさんの協力……」 花扇の言葉を最後まで聞くことは出来なかった。私の身体は私に従わず、ゆっくりと動いていく。まるで貝が合わさるかのように足を絡め、私も恥部を花扇のものに吸い付かせる。ぬちゃり、ぬちゅり、合わさるふたつの女性器。熱く、蕩けてしまいそうにぶつかる湿度にどうしようもないなにかが溢れ出る。 「夕霧……、ぁ、好いておる。おまえ、さんをっ、ン、!あぁ!」 己の欲に従い、腰を揺らし、花扇の唇を食す。指先で可愛らしい乳頭を弾くと、花扇はのけぞった。 「ン、あぁ……、気持ちよい………」 私の言葉は花扇の口付けで飲み込まれてしまう。私が乳頭を弾いたお返しとばかりに、陰核をきゅぅぅと握り、摘まれる。 「っ、あぁ!!!」
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