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ぐぐっとラベンダーは力説する。
つまり、わたくしを助けないと、ラベンダーの愛するディーン兄様も死亡する。
だから、兄様を助ける為に、わたくしに協力してほしいと。
「いままでのお話は全部、この録音の魔法機械で録音しました。
これを証拠として、クーデリア様に差し上げます。
わたしが裏切ったら、これを証拠として使ってください」
懐から、ラベンダーは小型の魔法機械を取り出し、差し出してくる。
うん、でもね?
これを使ったら、転生云々もばれてしまうわけですし。
そもそも、わたくしに脅されて言わされたといわれれば、それこそ破滅ですわよね?
「うんもうっ、どこまで疑り深いんですかっ。
まぁ、お気持ちは分かりますけど。
悪役令嬢物もいっぱい読んだし、大体ヒロインは悪役令嬢をはめようとするし。
わたしだって逆の立場だったら、絶対信じないだろうなって思うし……」
うーん、どうすればいいんだろうと、ラベンダーは頭を抱える。
わたくしも、あんまりにも疑り深いかなとは思いますのよ?
でも、いままでわたくしはラベンダーを避けてきました。
それはつまり、いまの彼女の人となりもよくは知らなくて。
破滅の未来と彼女への信頼を天秤にかけると、気持ちはどうしても疑り深くなってしまうの。
「……とっても恥ずかしいのですが。ディーン様との出会いを、聞いていただけますか?
わたしの思いが本物だと、知ってもらいたいんです」
「どちらで、知り合いましたの? 学園かしら」
「いいえ、違います。わたしがディーン様に出会ったのは、いまから五年前です。
わたしは、その頃は孤児でした。
父も母も小さい時に亡くなって、物心ついた時には、もう教会で暮らしていました」
そうね。
その設定はわたくしも知っているの。
ゲームはラベンダーが学園に入学した時から始まるのだけど、過去話として出てくるのよ。
孤児として暮らすラベンダーは、ある日、カワーゼ伯爵の目に止まるの。
ラベンダーは、カワーゼ伯爵の行方不明だった妹にそっくりの容姿だった。
違うかもしれないけれど、カワーゼ伯爵は妹そっくりのラベンダーを養女として迎え入れ、わが子として大切に育てるのよ。
「ディーン様と出合ったあの日、わたしは、市場にいました。そして何故かいきなり、露店の店主に万引き犯と間違われたんです。
腕をつかまれて、殴られそうになりました。
でも、わたしは殴られなかったんです。
ディーン様が、わたしを庇って、変わりに店主に殴られてくれたから」
店主に殴られたお兄様は、石畳に倒れて、顔を擦りむいたのだとか。
すぐにお兄様の護衛達が店主を取り押さえて事情を聞き、万引されたとされる商品の代金を払って事を納めたのだとか。
「ディーン様は、わたしが差し出したハンカチで頬を抑えながら、笑ってくれたんです。
『大丈夫? 怖かったね』って。
周りの大人達は誰も助けてくれなかったのに、ディーン様だけが孤児のわたしのことを守ってくださったんです」
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