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(10)決定と決断
しばらく沈黙が訪れた。
やがて女医は言った。
「貴女は厳重な警備下に置かれていたけど、誘い出されたのよ。我が国の大失態というわけ」
「けど抜け殻の私を取り戻してくれた」
「そういうことになるわね」
「サイボーグを破壊したのはどこなんですか?」
「別の大国だわ。言わないけどわかるでしょ?
本当は誘拐するつもりだったけど、自分たちが危なくなったので身体から破壊したの。結局無駄に終わったけどね」
「私は紙一重で助かったんですね」
「あまり考えないほうがいいわ」
(確かにそうね。私には休養が必要だわ)
「退院後はどうなるのですか?」
「以前と同じよ。国防総省の管理下に置かれてはいるけれど、自由度も高い。好きなものを買えるわ。ボディガード付きで外出もできる」
「あまり自由ではなさそうね……」
「仕方ないわ。自分の天才を恨むことね。
それに私たちだって自由なんてないようなものよ」
「明日はケーキを用意しておくわ」
「何のために?」
「貴女の17歳の誕生日だからよ」
それは思い出した。同時に私には父母がいないことも。
私は、天才出生計画のために生み出された、遺伝子の掛け合わせに過ぎないのだ。
そんなのは当たり前のことであって、何の感慨もない。
私は義務を果たすために生み出されたのだ。
「義務は果たすわ」きっぱりと私は言った。
私の育ての親は優しく微笑んだ。
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