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(5)睡眠、そして目覚め
それから本当に俺は眠ったようだ。
アンドロイドが睡眠を取るなんて初めて聞いた。と言うより体験した。
34時間経った。
眠っていたらしい7時間の記憶はなかった。
俺は目覚めた……らしい。
『目覚めたようだな』
ギザの思念が届いた。
『今からはゆっくり進めるので焦らないでくれ。俺は、技術者や医師たちの伝言役だ』
『医者? どういうことだ?』
『今は言えない。我々を信じてほしい』
『わかった』
『まず嗅覚だ。ゆっくりゆっくり鼻呼吸をしてくれ』
俺はむせかけたが、いい香りだと感じた。嗅覚センサが直ったのだ。もしくは交換したのか?
記憶にない時間に何をされたのかなどわかったものじゃない。だが彼らを信用するしかない。
『次は聴覚だ』
「私の声が聞こえますか?」
今度は思念ではなく正真正銘の声=音波だ。間違いなく両の耳で聞こえた。優しい女性の声だ。
「あぁ、聞こえる」俺は自分の声に驚いた。女性のような声だったからだ。
驚いていると女性の声が言った。
「それでいいのよ。びっくりしないで」
「今から手を握るわ。驚かないでね」
柔らかな手が俺の右手をやさしく握った。
触覚が戻っている。
もう驚かなかった。
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