(8)脳のコピー

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(8)脳のコピー

「貴女の脳はコピーされA-12というサイボーグに移植されたの」 私は冷や汗を流しながら聞いていた。記憶が蘇ってきた。錯綜とした記憶が。 「ところがその時、コピーではなく移動になってしまったのよ。つまり、貴女の脳は空っぽになってサイボーグの脳に引越ししてしまったの」 「そのサイボーグが破壊されたのよ、頭部だけを残して。脳の生命維持装置も壊れた」 「慌てた彼らは、一番早く用意できるアンドロイドの人工脳(アーティフィシャルブレイン)に、貴女を移動させたの」 「そのアンドロイドが男性型だったんですね」 「その通りよ。理屈はわからないけど、1人称自我というか性別の自我が、男性のそれに乗っ取られることになったの」 「ではなぜセンサーが壊滅したのですか?」 「してないわ」 「は?」 「センサーは最初から無かったの」 「では……」 「そう、人工脳(アーティフィシャルブレイン)と主要な神経だけがあったのよ。そしてセンサーのない伽藍堂の肉体機械が与えられた。緊急措置としてね」
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